7 催事 肌感で楽しむ

「鈴木敏夫 言葉の魔法展」

言葉と作家つなぐ力 プロデューサーに直結か

 (大丸松坂屋名古屋店)

  事前には展示内容を予想できなかった。見始めてすぐ、言葉と書にとてつもなく時間とエネルギーを注ぎ込んできた人であることが伝わってきた。

 ただ展示されている「作品」の言葉そのものはオリジナルではない。著名な作家や人物が残してくれた名句やフレーズである。ジブリ作品の本質を伝える究極のコピーは糸井重里だ、とここの展示にもあった。言葉を選び取ってくる感覚やセンスが持ち味だとみた。

 鈴木氏の書そのものはどうだろうか。表現力と味わいのある書体ではあるが、伝統的な「書」という範疇には入らないのではないだろうか。それよりも、もっと現代的でポップな感覚の「イラスト文字」にぼくには見える。

 何がこの人らしいかというと、言葉と才能ある作家を見つけ、それらを結びつける力なのだろう。展示には「宮さんの絵を見て描くのをやめた」という説明もあった。とんでもない才能にたくさん触れていくうちに、プロデューサーという立ち位置に、自分の居場所と能力を見出されたのではないかとぼくは解釈した。

 名古屋とその思い出について描いたイラストマップも飾ってあった。鈴木氏が生まれ育った街なのである。その絵だけからの印象では、街み並の記憶はそれほど濃いわけではないらしい。やはり言葉の人なのかな。

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