夢のような剣客親子 理想的なすがた
(双葉文庫、2018年)
もういいか、十分だよね、という言葉を自分に発しつつ、新聞に新刊広告が出るとそわそわし、本屋さんに平積みされるとすぐ買って一気に読んだ。
空也はまだ十代である。なのにすでに完成されたような侍道、剣士道を歩んでいる。関係する人々もみな応援してくれる。
剣の道で相対する男たちも一様にルールを守り、卑怯な手は使わない。そして必ず空也は勝つ。ありえないのだけれど、読めばほっとする。
もともとこのシリーズ、父の坂崎磐音が早熟な武士道の天才という設定だ。その息子もそうした資質を倍加したした形で育っていく。理想的で夢のような親と子のすがたがそこにある。『剣客商売』の秋山親子をほうふつとさせる。
空也は旅先でも「朝に3千、夕べに8千」の素振りを欠かさない。父の磐音も名実ともに天下一の剣士になっても、同じ習慣を貫いていく―。素人にはできないからこそ、この物語が成立し売れているのだろう。
それでも思う。ぼくもシニアゴルファーとしてそれなりの水準を目指すのなら、せめて「朝に30、夕に100」くらいの日課は課さねばならないだろう。この時点で早くも回数をひと桁下げているところにぼくの素地がのぞいてはいるのが情けない。 でもいい、とにかくまずは始めることだ。何事も始めるのに遅すぎることはない。