5 映画 銀幕に酔う

米英合作『ウィンストン・チャーチル』

型破り首相の決断 決められない今へ嫌味?

 (ジョー・ライト監督、日本公開2018年3月)

 2018年の米アカデミー賞。メーキャップ賞を日本人の辻氏が受賞したことで日本でもおおいに話題になった。DVDで自宅で観た。

 第二次大戦の初期に、ナチスドイツがベルギーやフランスへ侵攻し、ドーバー海峡に迫るころの英国の話だ。

 当時の英国議会の野党は、バレンタイン首相がナチスに対して何の対応もとれなかったと批判し、海軍大臣だったチャーチルが次期首相になる。このあいだの議員間のドタバタや政治的駆け引きは、いずこの国でも、いつでも同じなんだなあ、などと妙に納得してしまう。

 しかし当時のナチスは強力で侵攻スピードが速く、チャーチル戦時内閣はすぐに、英国は徹底抗戦するか和平交渉に応じるかの大きな政治的選択を迫られる。

 悩むチャーチルはなんと、閣議をすっぽかして、国民の肉声を聴こうと、生まれて初めて地下鉄に乗って、乗客の老若男女に意見を聞いていく。すると乗客たちは、ナチスの軍門にくだるより徹底して闘う方を選びたいと訴え、それがチャーチルの心を決めさせたー。

 実話に基づくのだろうけど、当時の英国のリーダーが生まれて初めて地下鉄に乗り、乗客の声を直接きいて心を固めたなんて、本当にあったことなのだろうか。

 チャーチルはこの体験をエネルギーに国会での「勝負演説」に臨み、その熱い言葉は議員や国民の心に響き、和平交渉に傾いていた与党重鎮たちに何も言わせなくしてしまう。

 やはり地下鉄の場面がこの映画の白眉だろう。EU離脱について「決められない政治」が続く現代英国へのメッセージでもあるのだろうか。

 映画のチャーチルはまた、朝ご飯からウィスキーやシャンパンを飲み、どこにいても葉巻を欠かさない。しかも話をすれば、辛辣なコメントやジョークを連発するという型破りな政治家だった。これほど嫌味な男もそうはいないだろうが、地下鉄の逸話がその嫌味を薄めている。ここでも「勝てば官軍」なのだろう。

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