4 評論 時代を考える

橘玲『もっと言ってはいけない』

強烈なフレーズ 冷徹な裏打ち

  (新潮新書、2019年)

 このひとの新作が出ると、どうしても避けて通れない。一読すると極論か猛毒にみえるフレーズが冷徹な裏打ちとともに目の前に投げ出される。

 冒頭の「1/3は日本人も日本語が読めない」とか、途中の「統計学的調査ではIQはアフリカよりアジアの中国・韓国・日本の方が有意差をもって高い」など、前作の『言ってはいけない』と同じように、パンチある社会分析が連発される。

 遺伝にまつわる調査結果が特に強烈なのだ。ほかにもー

  • うつ病や分裂症は、高い確率で遺伝する
  • 親や家庭教育より遺伝が50%、友人が30%
  •  アメリカのトランプや欧州の混乱を生み出している人たちのもとは、理解力の低さに…

 新聞社では禁句に近いようなフレーズばかりで、どうも正確には表現できない。筆者は恐ろしいほどの現実主義者であり、統計的確率論者らしい。

(▲たくさん読んできた)

 まえの『朝日ぎらい』でも書いていたこととも共通するが「人間は生まれついたときは平等である」とか「ハンディは教育の力でイーブンにできる」といったリベラル的な言説にがまんがならないのだろう。

 こういう議論の行きつく先はどこなのだろう。刺激的で興味ある内容であるぶん、何のためにこの議論をするのかという、もっと根源的なところに降りていかざるをえない気もする。

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