5 映画 銀幕に酔う

米映画『Green Book』

黒人ピアニストと差別 深読み誘うハリウッド

 (ピーター・ファレリー監督、日本公開2019年3月)

 米国の黒人差別に、黒人ピアニストと行動をともにする米国人が立ち向かっていく話だ。昨年のアカデミー賞の作品、助演男優、脚本の3部門をとった。これを作品賞に選ぶところがいかにもハリウッドらしい、というのが、いわゆる映画通の通説になっているようだ。

 イタリア系アメリカ人が、ジャマイカ出身の黒人ピアニストに雇われ、運転手兼マネジャーとして米国南部へのツアーに出る。このアメリカ人ももとは黒人蔑視だったが、ピアニストの腕前や音色を知り、その人柄の律義さと博識に触れるにつれて、互いに認め合っていく。

 南部で特に色濃い黒人差別をgreen bookを象徴として描き、この米国人が率先して戦いを挑んでいく。その組み立てはぼくにも安心して観ることができ、最後もほんわりと終わる。白人と黒人の友情がしっかり描かれていて、実話に基づいているので説得力もある。筋の通った作品なのだ。

 その一方で、米国人ファーストを前面に出すトランプ大統領へのハリウッドからのメッセージ、あえていえば当てつけという深読みも可能だろう。

 もっと違う視点があることもネットで知った。ハリウッドの中でも、黒人の間に批判があるという。この黒人ピアニストは人として卓越している。肌の色や出自を除くと、ピアノのうまさだけでなく、知識や文章力、まじめさといった人間的資質も際立っている。
 こんな黒人はめったにいないのだ。そうした黒人を軸にして反差別を訴えてもあまり一般性がなく、黒人差別撤廃の機運にはつながらないのではないか、という批判だろうとぼくは推測している。

 でも映画そのものはとても面白かった。楽しめたし、いろいろと学ぶことができた。ぼくは、それでいい。

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