8 街歩き 建築を味わう

岡田美術館 を訪ねて

足湯に大壁画 そして「深川の雪」

 ( 神奈川県・箱根町、2013年10月開館 )

 ドラマチックな構成の美術館である。

 正面のアプローチからガラス越しに見える風神・雷神の大壁画にまず驚く。福井江太郎という作家の『風・刻(かぜ・とき)』。とにかく大きい。

 そのアプローチにそって細長い足湯がある。入場者は美術館へ入る前か後に、湯に足をつけながら大壁画をながめられる。なんとも即物的な空間であり、どうだ、といわんばかりのわかりやすいメッセージだ。

 第二の驚きは展示品のひとつ、歌麿の『深川の雪』である。縦198cm、横341cm。浮世絵史上では最大だそうだ。著名な『雪月花』三部作のひとつとということも会場で知った。

 この『深川の雪』は昭和27年に銀座松坂屋で展示されて以来、行方不明になっていた。なんとぼくが生まれた年である。それが2012年に日本で「発見」された。60年もの空白の日時にだれがどこで保管していたかは明らかにされていないという。作品そのものも見ごたえがあったが、ぼくはこの「発見の向こう側」にも大いなる興味を抱いた。

 若冲も所蔵品にあった。しかし今回は、若冲も含め有名だったり人気の作品のいくつかは展示されていなかった。劣化を避けるためとの説明があったけれど、他館への貸し出しによる収入とか、再来訪を期待する営業戦略もあるのかもしれない。

 前日の6月8日午後に、同じ箱根で訪ねたポーラ美術館は、化粧品で成功した経営者のコレクションを展示していた。この岡田美術館はパチスロで財を成したユニバーサルエンターテイメントの岡田和生氏のコレクション。美を求める化粧品と、射幸心をそそるパチスロ。高度成長期に大衆の心をつかむことで生まれた消費と利益の副産物が、たまたまふたつ、この箱根の森でぼくたちを呼び寄せ、楽しませてくれている。

 そんなぼくの括りを、嫌味や皮肉には終わらせない潔さも認めざるをえない。それこそ美の力なのだろう。      

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