1 ゴルフ 白球と戯れる

「中部ミッドシニア決勝」挑戦記

11.5ftグリーン 未体験の速さ スリル満点の66位

 65歳以上の男子アマが競う中部ミッドシニアゴルフ選手権にことし初めて挑戦した。9月2日と3日に呉羽カントリークラブ(富山市) で開かれた決勝では、「11.5フィート」という未体験の高速グリーンにしびれ、翻弄された。公式試合ならではのスリルと緊張であり、それを存分に楽しむことができたので、66位タイという結果にも満足している。70歳になる来年はグランドシニア選手権に”ルーキー”として挑戦したい。

プロの舞台に迫るスピード

 ゴルフ場のクラブハウスには通常「本日のグリーンスピード」という表示があり、ぼくはその数字がとても気になる性質(たち)だ。

 その数字はスティンプメーターという器具でボールを転がして測る。そのグリーンではどれくらい先で止まるかの平均値を「ft(フィート)」で示すのだ。この数字が大きいほど「速いグリーン」となる。

 今大会の舞台、呉羽カントリー「日本海コース」の表示はこうだった。

  1. 9月1日(水) 練習ラウンド  9.5
  2. 9月2日(木) 大会の1日目 11.0
  3. 9月3日(金) 大会の2日目 11.5

 ぼくがいま所属するクラブの表示は普段は8.0~9.5である。クラブ選手権のような大事な試合の日には10.5くらいまで速くなる。プレーした日に11.0以上の表示を見た記憶はない。

 プロの試合ではテレビ解説者が「きょうは12.5フィート、そこそこ速いですよ」などと表現している。日本のプロトーナメントでは12~13フィートが多いらしい。ぼくには無縁の速さだと思っていた。

ボールが滑る 倍はいく

 大会の本番で体験した「11.5フィートの速さ」について、浮かんでくる言葉をランダムに列挙していくとこんな感じになる。

  • ボールがよろよろせず、滑るように進んでいく
  • 平坦なところでも8.0フィートの倍は転がる。下りならもっといく
  • 傾斜や芝目の影響を受けやすく、芯で打てないと増幅される
  • 初めはまっすぐでもカップ直前で右か左へそれたりする
  • 怖がってボールをなでるように打ったらますます入らない
<▲スタート前のパッテンング練習場。「速い」「すげえ」「怖い」の声…>

 難しさはぼくのバット数が示していた。「9.5」だった練習ラウンドは26とまずまずだった。「11.0」に上がった1日目は32へと一気に6打も増えてしまった。すこしは慣れたつもりで迎えた「11.5」の2日目も30の大台に乗った。

 3パットの回数はもっと説得力がある。練習ラウンドはゼロだったのに、1日目は3回、2日目も2回もやらかした。本番の緊張を差し引いても、速いグリーンにぼくが対応できなかったのは明白だろう。

● それでも愉悦の方が大きい

 でも悔しさはまったくない。このグリーンは考えもしなかった濃密な読みをぼくに求め、その過程は深い愉悦をもたらしてくれたからだ。

 一緒に回っている4人全員のボールがグリーンに乗ると、自分がボールを打つまでのあいだ、眼球と頭脳は動き続けている。焦点はひとつ。ピンまでまっすぐか、左か右へそれるか、それるならどれくらいか…。どれくらいの距離を打つつもりでヒットするのか…。

  • 傾斜と芝目を真剣に読み、ほかの人のボールを凝視する
  • いつもより弱く打たざるをえないので、ボールはゆっくり進む
  • だから同じ距離でもカップインまでの時間が長い
  • 芯でラインに打てたかどうかが勝負だから技巧が出る

 ぼくはかつて、自分の番がきてからも実際に打つまでに時間をかけすぎて、仲間や同伴者から「スロープレーすぎる」と注意されたことがある。それ以後は、自分の順がくるまでにラインとタッチを固めようと集中することにしてきた。といっても数十秒から数分だけど…。

 自分の順がきたらすぐアドレスに入り、素振りせずに感性でヒットする。ボールの転がりを左目のすみで追っていく。予想通りのラインをたどっているのか、ずれていくのか…。速いグリーンほど、このスリリングな時間を長く味わえる。何もかも忘れて—。それでも数秒にすぎないけれど…。

● ジュニアは悩まない

 これだけ書いてもなお、こぼれてしまっている感覚がある気がする。文章にするのは、あのグリーンで「下りの2m」を沈めるより難しい。

 2日目に同伴者となったKさんは、会場となった呉羽カントリー倶楽部のメンバーで、ホールを移動する間にこんな話をしてくれた。

 「このあいだジュニアの試合がここでありましてね。その日もグリーンはかなり速かったんです。でもね、小学生や中学生たちは、どんどん強めにピンへまっすぐに打ってくるんですよ。外したら3mは向こうへいってしまいそうな勢いで。それがまた、よく入るんです。怖いもの知らずというか。大人になるほど、外した時のリスクを考えて、強くまっすぐ打てなくなって、入るラインも入らなくなるんですね」

 老境に達したぼくにとって、パットのラインとタッチを考え悩むことはゴルフの愉しみのひとつになっている。考え迷うことは是とし、その上で最後は強くまっすぐに打てるようになるしかあるまい。

● 予選は4会場で195人 決勝は101人

 この大会は中部ゴルフ連盟が主催している。予選は6月から7月にかけて4会場に分けて実施された。あわせて195人が参加し、各地の上位25-35位の計110人が通過して、富山での決勝への出場権を得た。

 ぼくは6月25日の第3会場「愛知カントリークラブ」の予選に参加し、57人のうち19位で予選通過できた。井上誠一が設計したパー74の名コースを80(6オーバーパー)で回ることができた。ぼくとしては上出来だった。

● 決勝は101人 納得の66位タイ

 富山での決勝には101人が出場した。予選免除のシード枠があり、予選通過したけれど決勝を棄権した選手もいて、この人数になったらしい。

 舞台は呉羽CCの「日本海コース」で距離は6402ヤードに設定された。シニアの試合としては、標準的な距離だろう。

 ぼくは初日が85(13オーバー)で全体の53位タイだった。2日目も86 (14オーバー)を打ち、2日間トータルでは171(27オーバーパー)の66位タイだった。

 9月4日の中日スポーツによれば、トップ選手は65歳とある。2日とも「76」で回って計8オーバーパーだったから、ぼくからはとんでもなく遠い。

 13位までは全日本の大会に進めることになっていた。今回の13位は2日間で161(17オーバーパー)。そこともなお10打の差がある。1ラウンドで5打はやはり大きい。あの難しいグリーンであっても80を切る力がないと全日本には進めない。

 昨年6月に退職してやっと、平日のど真ん中に遠方で開かれる大会にも参加できるようになり「公式競技の愉しみ」を知った。緊張の中であのグリーンを体験できたし、69歳の今の立ち位置もよくわかったから、中部で66位という成績には満足している。

 来年には70歳になるから、ひとつ上のグランドシニア選手権の挑戦権が得られる。あこがれの全日本の舞台に立つ夢をめざして、年齢的には有利な「ルーキーイヤー」に賭けてみよう。

■コラム1  初任地の名門コース

 呉羽カントリー倶楽部がある富山市はぼくの初任地だった。20代後半の5年半を過ごした。新聞記者だけでなく結婚生活もここで始めたし、長男と長女はこの地で生まれた。

 このゴルフ場は開場から60年の歴史がある名門で、なだらかな呉羽丘陵に広がっている。そこから北側に見下ろせる「日本海」と、東側に見える「立山」の名がそれぞれ18ホールにつけられていた。

 練習ラウンドに訪れたとき、コース看板に「日本海」「立山」の字面を見てぼくは、予想もしていなかった感傷に襲われた。駆け出し記者と新婚生活の日々を思い出してしまったのだ。

 初任地を離れて37年。いろんなことがあった新聞社を退職し、自称「ブ」ロゴルファーとしてこの地を再訪することになるとは…。人生はわからない。

<▲呉羽カントリーHPの写真から>

■コラム2 和気あいあい 年寄り仲間

   参加しているプレーヤーはみな65歳以上だから、立派な年寄り、あるいはおじいさんばかりだった。1日目の朝の練習場でぼくが球を打ち終えて、クラブハウスに戻ろうとしたら、大きな声が後ろからした。
  「だれか、携帯電話を忘れていませんか? 」

   ぼくは自分の携帯だとすぐに気づき、振り向いて言った。
 「あっ、それ、私のスマホです。ありがとうございます。このところ忘れものが多くなってしまって、お恥ずかしい…」

 すると、大声の男性は満面に笑みを浮かべながら答えた。
 「わたしなんてねえ、自分の名前も忘れるくらいですから…。ここにいるみんな、そうですよ」
 まわりの年寄りたちが大笑いしたのは言うまでもない。

■コラム3  スタート紹介で「~君(くん) ! 」

<▲1日目10番スタート組の様子。「紹介」の後の第1打>

 1日目の1番ホール。どのプレーヤーも緊張の第1打を打つ前に、主催する中部ゴルフ連盟の係員から所属クラブと名前を紹介された。その際にぼくはこう呼ばれた。
「東名古屋ゴルフクラブ所属 ダンノ マコト 君(くん) 」

 スポーツの試合で「君づけ」で呼ばれるのは、高校3年夏の陸上競技の試合が最後だった。その後はずっと「~選手」か「~さん」だった。青春がしみ込んだ「君づけ」で呼ばれ、69歳のぼくは晴れがましかった。70歳の来年も「~君」が聴きたい。

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