1 ゴルフ 白球と戯れる

久しぶりの朝練 ロッカー番号は「007」 大好き映画に励まされた

 <▲ (上)ロッカー鍵 (下)練習場受付用紙>

全国未達の失意10日 再挑戦に勇気

 全国大会への11度目挑戦もかなわず失意の10日間を過ごしたあと、やっと練習する気になり20日朝、所属コースへでかけたら、もらったロッカー番号が「007」だった。大好きな映画のテーマ音楽が頭に流れ、舞い上がってしまった。「あきらめるな」。ゴルフの神様がジェームズ・ボンドの真似をして告げている。

■11連敗 2日目の大崩れに悔い

 ぼくは5年前に退職した後、暮らしの真ん中にゴルフを置き、年代別の公式試合で全国大会に出るのを目標のひとつにしてきた。

 しかしことしもCGAグランドシニア中部大会(10月8・9日、賢島CC)は17位タイに終わり、13位までの全国切符に届かなかった。11度目の中部敗退。1日目は好発進できたのに、2日目で大崩れしたから、悔いはいまででいちばん深かった。

 来年も挑戦するか決められないまま10日を過ごした。でも体も心もなまってきたし、練習球を打ちながら考えようと、20日早朝、所属コースへ向かったのだった。

■確率は1/364?  25年で2度目

 日本のゴルフ場では朝の受付時にロッカーの鍵が渡される。その番号はロッカー室だけでなく、練習場やレストランでも必要になる。

 この球戯、スコアを筆頭に数字だらけだ。パター以外のクラブには数字がふってある。球を打つ前にはカップまでの距離を確認する。だからロッカー番号に意味があるとぼくは一喜一憂する。典型は「72」。「きょうはパーで回れるぞ」と―。

<▲ハウスのロッカー室>

 ぼくが所属するクラブの男性ロッカー室には番号が364まである。入会して25年、年に30回は通ってきて「007」は3年ほど前に1度あっただけ。「練習だけ」の日は50番までが多いが、2度目はなかなか訪れなかった。

■大好きシリーズ 4作は印象記も

 その「007」の映画は、Wikpediaによると、1963年の『ドクター・ノオ』からシリーズ化して27作が公開されてきた。コードネーム「007」の英国スパイ、ジェームズ・ボンドは6人が演じてきた。ぼくが観たのはショーン・コネリー、ロジャー・ムーア、ダニエル・クレイグの3人が主演した20作ほどだ。

 6代目のダニエル・クレイグが出た直近5作のうち4本は、印象記をこのサイトに公開している。つけた見出しは―

2009『Casino Royaleカジノ・ロワイヤル』
   頭も同居の肉体 6代目の疾走に驚嘆
2012『Skyfall スカイフォール』 
   敵は元同僚 ボス殉死 驚きの展開もOK
2015『Spectre スペクター』
   IT・特撮を駆使 活劇の面白さ前面に
2021No Time To Die
   細菌兵器vsボンド コロナ禍と二重写し

 <▲『No Time To Die』のポスター>
冒頭に馴染み テーマ音楽 ボンドの銃

 どの作品も冒頭にいつものテーマ音楽が流れる。歯切れのいいリズムとメロディ。画面には渦巻き状のトンネルが現れ、シルエットのボンドが出口右から歩き出てきて、体を左へひねると両手で銃を聴衆に向けて「バーン」—。

 ぼくはこの日、ゴルフ場のフロントで鍵の番号を見た瞬間、すぐ頭のなかに、そのテーマ音楽と映像が流れたのだった。

■練習場用紙に「007 団野誠」

 クラブハウスの受付で鍵をもらい、割り当てられたロッカーの前に着くと、プレートの「007」をうっとりとながめた。

<▲(上)ロッカーの鍵 (下) ロッカーのプレート>

 バッグをかついで練習場に行った。いつものように受付用紙に記入する。ロッカー番号欄に「007」、名前欄に「団野 誠」。この瞬間、ボンドになったような気分がした。未体験の快感だった。思わずスマホで写真を撮っていた。

  <▲練習場受付に番号と名前を記入>

 練習場も午前9時をすぎると、球を打ち続けている物好きはぼくだけになった。映画のテーマ音楽を口ずさんでみる。はるか先のヤード表示板「200」に向かって左を向き、ボンドが銃を撃つポーズもやって、ひとりで悦に入っていた。

<▲(左)200ヤード先を見る(右)午前9時を過ぎると一人だけに>

■夫婦の会話「ポンドにドボン」

 昼前に帰宅すると、昼食をとりながら、妻にこの話をしてみた。そのときの会話を、ちょっと”味付け”しながら、ドラマ風に再現してみると―

 「きょうの朝練、クラブがくれたロッカー番号にびっくりしちゃった。何番だったと思う? 三けただよ」
 「うーん、警察の110? 消防の119? 日付? 連番? わからないわ」
  (スマホ写真を見せながら)「なんと『007』だったんだ。練習場の受付用紙に『007 団野誠』って書いたんだ。すごくない? おれ、もう舞い上がっちゃったぜ」
 「それは、ラッキーだったわね」
 「こないだの中部大会も、おれ、全国に届かなかったじゃない。11連敗だし、もうあきらめようかと思ってたけど、もう1年やれ、と神様がいってるらしい」
 「再挑戦、うん、いいんじゃない。ところでさあ、007映画の主人公の名前、なんていったっけ?  ジェームス…、うーん、ジェームズ・ポンドだった?」
 「ポンド? それじゃ英国通貨かPond(池)になっちゃうよ。ボンド(Bond)だよ」
 「そっか、ジェームズ……ドボン、だったよね」
 「えー、それじゃ語順が違うよ。ボンドだよ。『ポンド(池)にドボン』じゃ、OBになっちゃうじゃないか」

 妻と大笑いしながら、ぼくは決めていた。
 来年も挑戦しよう、池もOBも恐れずに。