捧腹絶倒から大円団へ ゴルフの神様が導く
(集英社インタナショナル、2009年4月)
読み直しである。ぼくの書棚のゴルフコーナーに鎮座していて、こんなゴルフ小説をかつて読んだという記憶はあったが、細部や筋はまるで覚えちゃあいなかった。
ただ骨格はかすかに頭の隅に残っていた。大女と小男とか、絶世の美女とぶさいくな男といった組み合わせが出てくる。まあ普通に見ればアンバランスな男と女が、ゴルフのプレーや出来事において捧腹絶倒の珍事が生じ、ラストはハッピーエンドで終わる―。
いずれも仲を取り持つのはゴルフの神様である。この球戯が持つ深さやトリッキーさ、意外性、空きの多さ、緩さみたいなものを筆者は自由に利用しながら、無数のストーリーを編み出している。
小説の舞台になっているゴルフ場が、ずっと同じなのか、物語ごとに変わっているのかはよくわからない。ただ、語り部である最長老ゴルファーが、若いゴルファーに、昔のおかしな出来事を思い出しながら語り掛ける仕立てになっている。いずれも表現が大げさで、たとえ話も大胆で、スケールがどでかい。
たしかにこんな小説、ほかには読んだことがない。笑えるのである。そしてしみじみ、思うのだ。ゴルフって、懐が深いなあ。