世界遺産コルビジェと松方コレクション
(東京・上野)
コルビジェ建築が昨年、世界遺産に登録されたとき、この建物はそのひとつとされた。それもあって夏の1日、妻とふたりで訪れた。
訪れるのは確か、大学生の時いらいである。40数年ぶり。建物は想像の範囲内にあり、驚きも感動も大きくはなかった。
それとは逆に、もともと存在さえさほど意識せずに観た松方コレクションがよかった。欧州の美術の流れを中世からオーソドックスにたどることができる。当然ながら、ぼくにもなじみが深い19世紀後半以降の絵画も、マネを中心にバランスよくコレクションされている。
これはすごいなあと思ったのは、まだ世に写真がなかった時代の写実的な宗教画や風景画、肖像画などもどっしりと重く並んでいることだ。名古屋で展覧会「マネ それからの100年」を観たばかりだったからか、印象派の前の西洋絵画群がすっぽりと頭から抜けていたのだ。
欧州の古い美術館に行くとぼくは、19世紀までの膨大で暗い作品群を前にして、呆然とたたずむことが多い。それを今回、日本で思い返した。ロダンの彫刻やブロンズ像も、たまに見るのもいいなあ。