7 催事 肌感で楽しむ

東儀秀樹とウィーンの精鋭『挑戦する伝統』

夜の池に無情の小雨 小舟に篳篥に音色

 (名古屋市・徳川園)

 待望の野外夜間コンサートだったのに、なんと雨になった。午後3時ごろには上がるとの予報は無情にも裏切られ、1時間遅らせての開園も結局は報われず、最後まで小雨の中での演奏会になった。

(▲パンフから)

 観客がカッパを着て聴く演奏会は初めてだったから、開園時はぼくにも少し白けた気分があった。ところが演奏が始まると、音響効果は期待以上にすばらしくて、雨は気にならなくなった。

 生まれ変わった徳川園に特設ステージが作られ、その前は池になっている。後半の出だしでは、東儀氏が対岸で小舟に乗り、篳篥(ひちりき)を演奏しつつ、小雨の中をステージに近づいていく演出があった。映画『陰陽師』のようだ。

▲パンフから

 主催者側として裏方で走り回っていた事業局の若手が、後半が始まる前にぼくに興奮しながら、こう言った。「東儀さんは、楽器(ひちりき)が雨でだめになってもやるといってます」

 演奏会のテーマは「挑戦する伝統」。小雨と小舟と篳篥…。掲げたテーマにふさわしいシーンだった。一生の思い出になる。

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