デジタル若者を大人に マクレーンの『初秋』
(レン・ワイズマン監督、2007年6月公開)
いつものやつ(マクレーン警部、ブルース・ウィルス)が、いつものタフネスぶりを発揮して、いつもの超人的なアクションで悪をやっつける。わかっているけど、あきないし、今回も面白い。
今回の相手はサイバーテロだ。マクレーンはもともと超アナログのマッチョ男だが、たまたま護送中だった若者が、テロのソフトの根幹部分を担った若者という設定。このふたりが協力してテロと戦い、危機を乗り越えていく。
ハイテクに詳しいデジタル若者が、マクレーンと行動することで、生身の人間や世界の手触り感とか、マッチョであることの充実感、観念論のむなしさに目覚め変身していく姿がいちばん見ごたえがあった。
これってマクレーンにとっての『初秋』ではあるまいか。『初秋』は、ロバート・B・パーカーが描く私立探偵スペンサーシリーズの中でもいちばん好きな一作。ひ弱な若者と行動を共にし、精神的にも自立させていく話だ。
そういえばマクレーンとスペンサーはもともとよく似ている。どちらもタフでマッチヨ。言葉遣いにはセンスがあり、基本的にフェミニストで、家族(恋人)想いだ。もちろん悪や形式主義や権威が大嫌いでもある。米国人が描く理想の男性像のひとつなのだろう。