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CBCラジオ「ドラ魂KING 川上憲伸KK SPECIAL」

剛腕から解説へ 重い球から平たい言葉へ

 【注】2018年2月のCBCラジオの番組審議会に出られず、書面参加した時の文章です。審査対象の番組は1月末に放送されました。CBCラジオの許諾を得たうえで公開します。

 プロ野球ファンにとって、特に前年シーズンの成績がふがいなかったチームのファンにとって、シーズンオフの約5か月間の中でも、この1月末の真冬というのは「もっとも心やすまる時期」だと思います。前年の悔しさは時間によってかなり癒されていて、2月から始まるキャンプを前に、初めて迎え入れる新人や移籍組の顔を浮かべながら、どんなシーズンになるかと想像し語り合う時間と余裕がたっぷりとあるからです。

 その意味で、この番組のスタッフの皆さんは5年前から、そうしたファン心理をしっかりと理解し、どんなに前年の成績がふるわなくても、地元チームへの愛着を「接着剤」や「触媒」にして、独特の番組空間を作り上げてこられた、と評価しています。

 ことしのドラゴンズのオフは年明けに、星野仙一・前監督の突然の訃報や、松坂大輔投手の入団決定など、例年にないビッグニュースが続きました。

 このたびドラ魂KINGのメーンパーソナリティに迎えられた川上さんにとって、亡くなった星野さんは明治大学の先輩であり、縁あって逆指名で中日に入団するきっかけになった監督でありました。また松坂投手は川上さんの5歳下ですが、プロ入りは1年遅れなので、まさに「同じ右投げの本格派エース」として互いの全盛期を知る関係でもあります。

 川上憲伸さんの華麗な球歴や全盛期の重い球質を振り返ると、私は、あの哲治氏のように「いずれは、重厚な言葉を連ねる大物解説者になるのでは」という印象を抱いてきました。

 しかし今回の番組を聴いてあらためて、ほかの多くの元スター選手解説者にない表現力や個の力を感じました。言い換えれば、自らが感じたことや思いを、みずからが持つ平たい言葉とリズムでリスナーに伝えたい、という欲求の強さです。

 たとえば、この日の番組の中でいうと、次のような話題の時です。

  • 新主将である福田選手の沖縄到着時のスピーチについて
  • 大リーグでの同僚だったチッパージョーンズの愛称について
  • 沖縄での2002年、2軍キャンプで会った捨て犬ブーチャンの思い出
  • サヨナラ勝ちした2005年開幕試合のヒーローインタビューの際の本音

 こうした川上さんの特色について、番組審議会資料の「企画意図」は「既成概念にとらわれない自由な表現」「ユニークでオリジナリティあふれるコメント力」と説明されています。こうした特性は何よりもラジオにもっとも向いているのではないかー。スタッフの皆さんはそうお考えになったのでしょう。実際にうまく引き出されていると思います。

 プロ野球のどんな花形選手も、生身の人間として別の世界や魅力を持っていると思います。一部の方は現役引退後も、それらをうまく生かして解説者に転身されたり、メディアがうまく引き出してきました。先輩の星野さんがそうでしたし、山本昌広さんや山崎武司さんもそうです。

 これは中日球団の「伝統」であり、もしかしたら「ドラ魂」なのかもしれませんね。その辺もぜひ番組で生かし、探り、育ててくださればと願っています。 長い文になってしまいました。もとが記者だったからでしょうか。参考になれば幸いです。

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