2 小説 物語に浸る

幸田真音『日本国債』

なぜ発行額が増えたか 根本も知りたい

 (講談社文庫、初刊は2000年)

 ぼくがバンコクに赴任する前か、行った後にブレークした経済小説だ。

 読んでいるときはとても引き込まれ、面白く読み進むことができた。それなのに読み終えると不満のほうが大きく残ってしまったのはどうしてだろう。

 文庫2分冊と読みごたえがあり、力が入っている割には、欠けているものが大きすぎるからではないか。あえてそこだけ、拾うと―

 まず、そもそも日本国債の発行額は大きすぎるのか、大きいとなぜ問題なのか、なぜ大きすぎるところまで増えたのかが、迫力をもって迫ってこない。これがいちばん大事なはずだ。小説だからそこまで求めちゃいけないかもしれないけど。

 ストーリーに不自然さが多い。説得力がとぼしいというべきか。たとえば刑事の佐島の位置づけがストーリーに何ももたらしていない。彼は何者なのか。

 女性主人公もぼくには等身大に見えない。なぜ子どもとの会話が出てこないのか。別れた夫との後の恋愛はどうなったのか。

 会話文でだれが話しているのかはっきりしないところがある。特にディーラーどうしの会話の場面で気になった。筆者みずからがかつて為替ディーラーであったことが、現場感覚を伝えたいがためにかえって災いになっていないだろうか。

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