30年代の街の空気 低い目線で伝える
(愛知県美術館)
名古屋市生まれで愛大卒の伝説的カメラマン。写真家として著名だけど、作品をまとめて観たことはなかった。
ぼくや妻が生まれた1951、52年ごろに愛知で撮られた写真がいっぱいあった。「懐かしの昭和30年代」の人や街が、低い目線で映しこまれていた。髪型や服、下着、目の力というものがまっすぐに時代を伝えてくれる。
副題は「愛知曼荼羅」。覚王山の日泰寺の参道とか栄の街の様子など、写真家の力量うんぬんよりも、あの時代への懐かしさから引き込まれた作品が多い展覧会だった。それも写真が持つ力の一側面だろう。
いま読んでいる半藤一利『昭和史 戦後編』とも通じ合うところがあった。眼だけでなく、頭の知的興味もいっぱい刺激される写真展だった。
前日はサッカーW杯開幕日で、その夜の当番デスク勤務が明けた翌日午後、愛知県美術館へ妻とでかけた。