5 映画 銀幕に酔う

邦画『武士の一分』

キムタクの表現力さすが 剣の切れに不満

 (山田洋次監督、公開2006年12月、MOVIX三好)

 これは木村拓哉の映画だ。彼の表現力、内面力、存在感にすべてがかかっていた。その意味ではまずまずと感じた。人気タレントとしての先入観をある面では見事に裏切り、ある面ではやはりキムタクと思わせる。

 主人公は失明しているが、もともと剣ができて、果たしあいをしても勝てるだけの力がある、という設定だ。

 しかし木村拓哉は現代風のヤワな男というイメージが強いので、そのあたりの説得力は最後まで弱かったと思う。

 果し合いの前の稽古シーンをもっと長くすれば違ったかもしれない。稽古を重ねることで彼の剣に凄みが増していくことを観客が実感できるように。鍛え直している師匠役が緒形拳というのも、ちと線が細かった。

 山田洋次監督の時代劇3部作の3作目である。いずれも原作は藤沢周平。これまで観た『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』も、剣が重要なテーマになっていた。大事な剣の水準が今回はいちばん低かったように思う。

 そのぶん、心の機微にあわせた主人公の顔や目の表情には、前2作にはない新鮮味を感じた。そこが、この映画は木村拓哉、と思う理由だ。

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