米国夫妻による記録 拉致の背景には迫れず
(クリス・シェリダン/パティ・キム監督、公開2006年11月)
このテーマのドキュメンタリーに挑戦したのが米国人夫婦であることに驚嘆せざるをえない。日本人は作らなかった。いや、作るべきだったのに手出しできなかった、というべきかもしれない。
政治的にきわめてセンシティブであり、制作や上映にはあつれきも予想できる。何より客入りは期待しずらい。理由はわかるのだが…。
ではこの作品が問題の核心に迫ることができたかというと、ひとりの観客としての無責任な期待を10点とすると、6-7点くらいに感じた。
北朝鮮がなぜこの拉致をせざるをえず、いろんな歴史の経過から引け目を感じていないことの背景まで迫ってほしかった。でないと、父と母の愛の物語で終わってしまう。取材上の限界か、言葉力の不足か、日本メディアの閉鎖性が遠因なのか―。
それでもドキュメンタリー映画としてぎりぎりの合格点でとどまっていると思う。それは「拉致」という事実の重みからだろう。
東海地区での上映は岐阜市、津市、松坂市の3市しかなかった。妻と二女を誘って岐阜まででかけ柳が瀬のCINEXで観た。50-60席のうち客は35人前後。ほとんどが僕より上の年代で、7割が女性だった。