あふれる使命感 フリー選択の感性と資質
(ちくま文庫、2006年12月)
この筆者の本は3冊目だ。『渡邉恒雄 メディアと権力』『野中広務 差別と権力』で感じた、取材姿勢のすごみが忘れられない。
どちらも、ここまではっきり書くのか、と驚いた。自分も周りも肝だと感じていることは逃げずに切り込んでいく。書くべきことを書くしかない「業」。そこにこそ、ジャーナリストとしての一級の資質があるのだろう。
この評論集でいえば、青臭い反戦派とか典型的サヨク論法などのレッテルを張られかねない部分は多々ある。しかし、あふれ出る使命感と、あるべき姿を希求する精神力の方により力を感じる。
経歴を見ると、筆者はぼくよりひとつだけ上の1951年生まれ。共同通信の社会部記者から京都支局デスクになり、小さなミスを恐れて細かな指示を出す自分に危うさを感じた、とある。
そしてフリーになり、すごみあるノンフィクションと評論を書き続けている。厳しい選択に耐えられる力と感性と資質が、うらやましい。