「左」「右」の度量 ともにジャーナリスト
(黒田勝弘・市川速水、朝日選書、2006年)
黒田氏は「ソウル特派員25年、コリアウォッチャー30年の産経名物記者」。かたや市川氏は「良識派・朝日のエース特派員」。そんなレッテルを張られているが、この対談を読むと、ふたりとも根っからのジャーナリストで、活き活きとした自由主義が底に横たわっている。
そんなふたりだからこそ実現した対談であり、出版が朝日新聞なのだろう。朝日と産経は右とか左とかの話になると論調は正反対になることが多いが、こうした度量だけはいつまでも堅持してほしい。
読みながら、なるほど論点の核心はそこかとうなる発言が何か所かあったが、最大の指摘は159ページだ。黒田氏が次のように指摘している。
北朝鮮を甘やかしてきたのは朝日。ぼくがいた共同もそう。戦後の日本ジャーナリズムの北朝鮮観のポイントは、ひとつはソ連・中国を含めた社会主義幻想があった。思想的トレンドとして社会主義にシンパシーを抱いていた時代だったから。もうひとつは過去の歴史に対する贖罪意識。このふたつが北朝鮮問題に凝縮された。だから北朝鮮は批判の対象でなく、理想であり評価すべき対象であり、温かく見守ってあげるべき国となった。それが50年続いた。それを主導したのが朝日ですよ。その結果、北が甘やかされ、拉致事件にまでつながった。
腹に落ちる説明だなあ。市川氏も「それは全くその通りだと思う」と応じている。読んでよかった。