旧約聖書に故事 4か国の悲劇がつながる
(アルハンドロ・G・イニャリトゥ監督、2007年4月公開、DVD)
昨年の公開で、菊地凛子が主演のひとりになっていて、作品がアカデミー賞候補と注目されてから、ぼくも知った。
バベルといえばブリューゲルによるあの超有名な絵を思い浮かべる。建築史を勉強していた時、建物の高層化の話になるとよく出てきた。
バベルは旧約聖書に出てくる町の名前。この町の人々は、高く登ろうという欲望にかられて塔をつくったため、怒った神は、人間を四つの言葉に分けてしまったという故事があるという。
この映画では、米国、メキシコ、モロッコ、日本で別々に起きる悲劇がやがて、ひとつの糸で結ばれていく。旧約聖書の故事からとった映画の意図はわかるけれど、そこが「神の怒り」とはとらえづらい。それぞれの悲劇にぼくが神の存在を感じないからだろう。
作品は確かに実験的だ。狙いは深く、俳優の演技もいい。そこはわかるが、圧倒的な共感にはつながらなかった理由も、また、わかる。そう、頭では感じても、腹に落ちてこないのだ。