バイト新聞店でTV ノンポリの自分と比較
(若松孝二監督、2007年12月公開、シネマスコーレ)
想像していた以上の重さと暗さとねちっこさだった。目を覆いたくなるシーンもいっぱいある。思い出したくないのに後になってもずっと記憶に残り、いろんなシーンを何度も振り返る映画になりそうだ。
見終わっていま、強く残る感覚がある。ここで描かれた若者群像や活動世界への抜きがたいまでの嫌悪感だ。何よりも不潔である。押しつけと全体主義も嫌だ。超観念的な物言いも…。
この映画で描かれた「道程」は、ちょうどぼくが舞鶴の田舎から名古屋に出てきて大学に入ったころから始まり、海外放浪旅行に出るための費用を貯めるために住み込みで新聞配達を始めたころまでだ。
連合赤軍があさま山荘に立てこもっていた1972年2月下旬、ぼくは大学1年生で、東山公園前の中日新聞販売店で夕刊の到着を待ちながら、NHKテレビの生中継を見ていたのを思い出す。事件が長引いたため夕刊が店に届くのが連日遅れて、ぼくを含む配達員たちは毎夕、店のテレビをぼおーっと眺めていた。
あさま山荘事件を起こしたのが、ぼくと同じか少し上の若者たちだったことや、その前には凄惨なリンチ事件もあったことは、後になって新聞で知った。ぼくは予定通り新聞配達を1年続け、翌春、バックパッカーとして横浜から船に乗ってロシア、欧州、中近東へと旅立った。
この映画を観て、あらためてつくづくと思う。ぼくは当時、本当にノンポリで、何も知らない学生だったんだなあと。
この映画は名古屋駅西のシネマスコーレで観た。日曜午後5時の上映開始。観客は5人だった。