吃音の苦しさと克服 最後にカタルシス
(トム・フーパー監督、公開2011年2月、MOVIX三好)
吃音とその克服。地味ではあるが当人には深刻な問題を、実は多くの人が大なり小なり経験しているか、近くで見ているのでないだろうか。
その吃音の苦しさと、なんとか克服していく過程が、だれもが知っている英国王を主人公に史実として再現しているところが最大の魅力になっている。国王を助ける言語聴覚士との友情にも惹かれた。
さらに歴史的な位置づけも効いている。第二次大戦が勃発した後、対ナチスとの戦いの前の大事なスピーチがラストにおいてあり、タイトルにもなっている。
歴史を変えた重大スピーチが最後に待っているというドラマ性と安心感も、観る側にはカタルシスをもたらしてくれる。
映画ではハリウッド資本の特撮大作が話題になりやすいけれど、この前に観たソーシャルネトワークと同様、ドキュメント色の強い実話物に観客がつき、高い評価を受けるというのは、個人的にもとてもうれしい。
今回の日本の東日本大震災を、たとえば福島原発事故がらみの映画化を年内に決めてしまえるくらいのスピードが日本映画界にあるだろうか。