7 催事 肌感で楽しむ

『あいちトリエンナーレ2013』

震災から泥舟まで 表現多彩な3会場

(愛知県芸文センター、名古屋市美術館、長者町)

 芸術監督が五十嵐太郎、テーマが「揺れる大地 われわれはどこに立っているのか : 場所、記憶、そして復活」である。

 ■芸文会場 3年前より歯ごたえ 

 2年前の東日本大震災を受けて、やはり震災、建築・都市がらみの作品が多い。記憶に残る展示を列記すると―。

  • ダン・ペルジョヴスキの落書き 単純な英語の単語や文章と図形を組み合わせて、アイロニーや人生の真実、文明批判を表現している。
  • ヤノベケンジのオブジェ 漫画チックでわかりやすい。放射能防護服の少年が右手に「愛」を掲げている作品が印象に残る。
  • ハン・フェンの「浮遊する都市」 上海のたくさんのビルの写真を薄い紙に貼り、細い糸に高さを変えて吊るしてある。見物客とその周囲の空気の動きにあわせて糸が揺れる。現代都市のもろさとはかなさ…。
  • 宮本佳昭の「福島第一さかえ原発」 原寸大の炉心のモデルを持ち込み、1-4号機を神社にしたてた模型と図面。和風屋根には1万年後の人類にむけて「ここに核廃棄物あり」の目印。建築家らしい、ど真ん中の直球だ。
  • リアス・アーク美術館(気仙沼市)の大震災メモリー 石山修武設計の美術館が集めた「大震災の記憶」。見ると息をのみ、言葉が出てこない。
  • ステファン・クチュリエの写真 フランスの写真家。既存建物の外観写真の組み合わせが多彩。垂直と水平、色遣い、ベランダや空の様子の変化…。建築的にとても豊かな世界を提示していてポストモダーンな感じがする。
  • ニカ・ターニラの映像 フィンランドの人口6千人の街に、チェルノブイリ後では初の原発が造られていく日々を3台のカメラで撮影し、同時に見せていく。工事現場の早送りは、人間を急き立てる原発メカニズムを暗示しているようで、怖い。

  まだまだあるけど、書ききれない。3年前より歯ごたえがある。

 ■市美術館 浮かぶ「泥舟」

  ぼくの目的はただひとつ、藤森照信の「揺れる泥舟」。実際に屋外に「浮かん」でいた。見たこともないけど懐かしい形をしていて、実に魅力的である。

(▲市美術館の案内地図)

 見上げると、船底の仕上げや窓の手作り感もオリジナルそのものだ。ただし空中に吊るすには、現代的な材料と機械がないと難しいだろう。

 藤森氏の故郷である長野・茅野市で見た『高過庵』はもっとのどかで、危なっかしかった。粗野で荒々しく、かつクラフト的でもあった。それと比べると、今回の『泥舟』はかなり完成されている感じがした。

 ■長者町会場 街歩きに新鮮さ

 今回も結構、楽しめた。個々の作品の質がどうのこうのというより、街歩きに新鮮さがある。古いビルを新しい世代がクリエイティブに使ってみたら、という実験の場に出会えるからだろう。

 おそらく既存不適格の古いビルの奥や、最上階の空きスペースに芸大生の野心的な展示が並んでいる。質は高くはないと感じるが、観て歩くのは悪くない。都会に住み、若い感性と同じ空間にいる気になれる。

 それでもやはり、作品の水準をもう少し上げてほしいとも思う。多くは自己満足の域から出られていない気がした。

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