5 映画 銀幕に酔う

邦画『小さいおうち』

戦争の負の側面 松たか子と黒木華が好演

(山田洋次監督、公開2014年1月、機中放映)

 原作は中島京子の直木賞受賞作、監督は山田洋次、主演は松たか子…。期待は高く、観終わっての手ごたえや余韻はそれをはるかに上回った。

(▲本棚の原作)

 赤い瓦屋根を持つ小ぶりでモダンな家がこの作品の舞台であり、タイトルにもなっている。昭和十年代に東京郊外にできたばかりだ。

 山田監督は、戦時色が色濃くなる前の東京郊外の暮らしだけでなく、世情や文化志向などをていねいに描いていく。それがあるから、「おうち」に住む実業家の妻と、そのお手伝いさん、芸大卒の青年たちの心のあやが、しっとりとした情感を伴って伝わってくる。

 松たか子は10年前に観た『隠し剣 鬼の爪』以来の山田作品だろうか。持ち前の気品がこの役にぴったりだ。

 驚いたのは、お手伝いさん役を演じた新人の黒木華だ。みずみずしさと芯の強さが共存していて、表現も多彩。その姿はぼくに、大竹しのぶを彷彿とさせる。大竹しのぶは『青春の門』で初めて観た時から強い印象を受けた。それ以降もさまざまな役をこなし、存在感を高めてきている。

 作品全体のテーマは、正面きっての声高な反戦ではない。しかし戦争がもたらす負の側面を心こめて切り取っている。

 シンガポール旅行へ向かう機中で観た。妻は原作を読んでいた。

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