4 評論 時代を考える

磯前順一『ザ・タイガース』

GS旋風のど真ん中 成長と確執と離脱

 (集英社新書、2013年11月)

 あのタイガースが昨年末、オリジナルの5人がそろってステージに立ち演奏している姿をテレビの録画映像で最後の方だけたまたま観たのが3月だった。その直後に、愛知学院大学名城公園キャンパスを視察に訪れた際、学内の本屋で目にしたのがこの新書。「再結成」にあわせて書かれたと思われる。

 いわゆるグループサウンズ(GS)の中心に彼らはいた。その人気はすさまじく、ぼくが中学3年から高校生、1966年ごろから1971年にかけて熱風のように吹き荒れ、同世代の男女をとりこにした。

 ぼくにとっては彼らは、同じ京都府の出身で年代が少し上だから、カッコいい先輩でもあった。ぼくもGSにかぶれてしまい、中3の時に同級生とバンドを結成し、学園祭で演奏したことを思い出す。

 しかしタイガースが武道館で解散コンサートをした1971年1月は高校3年生になっていた。GSからも離れていた。コンサート当夜は実家の自分の部屋で、2か月後に迫っていた大学受験の追い込みの真っ最中だった。

 本書は、彼らの出会いから解散までの道のりを、ていねいにたどっている。スターへと昇り詰めていく過程から、加橋かつみや瞳みのると仲間との確執、離脱騒動など短い期間にいろんなことが起きていた。時代や音楽シーンの変化、個人の成長、プロダクションとの関係などからみつく要素は多い。

 筆者は、雑誌のインタビュー記事や回顧本、新たな証言をきちんと掘り起こし、再構成していく。ぼくは断片的に残っている記憶をつなぎ合わせながら、彼らにそんなことがあったのかと振り返る旅になった。

 ただぼくもいまは62歳。彼らが当時の確執を乗り越え、還暦をキーワードに再結成の舞台に立つまで成熟できたことの方に、より関心がある。芸能界の最前線に残り続けた沢田研二や岸部一徳と、慶大進学してから先生になったという瞳みのるらの「その後」の生き方と心境をもっとたくさん知りたかった。

 それを知るにはやはりまず、昨年の再結成ステージでの音楽とあいさつをきちんと観なければなるまい。レンタルDVDで観られるようになるだろうか。

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