下戸なのに大胆、このタイトル
(ともに平凡社、1991年)
1993年に続けて読んだ2冊である。ちょうど経済部記者としてトヨタ担当が終わりかけのころだろうか。ベストセラーになっていたこともあるが、その2年前にEC統合取材で英国を訪れていたことも理由だったと思う。

それから25年もたってから読み直してみた。60代も半ばを過ぎ、胃がんで入院して、自分の人生の次のステージの選択肢として、英国に妻としばらく滞在してみたいなあ、などと夢想しはじめたからだ。
それがどうしたことか、本の内容はほとんど覚えていなかった。筆者名と口髭の写真、そしてこのわかりやすすぎるタイトルだけは記憶にあるのに。
「おいしい」の冒頭では、イギリスめしのまずさを認め、その理由をしっかりと書いている。しかしその一方で、食材はすばらしいことや、パブ文化をほめたたえている。それにしても、筆者がまったく酒が飲めない体質だということには驚いた。下戸なのにこのタイトル、大胆だなあ。
英国の個人主義と日本の全体主義
「愉快だ」はほとんどを、12世紀のマナーハウスでのボストン夫人との生活体験に割いている。イギリス人の個人主義は、宗教の全体主義より上にあるというところは、腹に落ちる。日本社会にまとわりつく全体主義傾向が嫌いで、英国式個人主義のほうが肌があうという部分も。
次は山口信吾氏のリンクス本を読み直そう。