8 街歩き 建築を味わう

箱根旅館「萬翠樓 福住」

旅館で初の重文 大部屋に歴史と時間 

 (湯本温泉、創業1625年=寛永2年)

(▲大部屋)

  ざっと4百年前に創業した老舗旅館だそうだ。今の建物は明治になって建てられた洋館で、平成14年、日本の旅館やホテルでは初めて国指定重要文化財に指定されたとパンフにある。現役の旅館では初めての指定でもあった。

 「いちばん広くていい部屋に泊まりたいけれど、ぼくら一組ではもったいないから、そちらも夫婦で一緒に一泊しない? 」。親戚夫婦からこんなうれしい声がかかり、もちろんとご一緒した。

(▲大部屋の天井)

 夕食をいただいた拾五(15)号の大部屋の天井画や掛け軸に、特に歴史と時間を感じる。伊藤博文とか三条実美の名がある書がさりげなく掛けてある。内部の造りや建具は、往時のおしゃれ感や高級感をとまとっているから、現代の感覚と微妙なハレーションを起こし、いろいろと楽しめる空間になっている。

(▲部屋の表札)

 どっぷりつかった湯本の湯は、まったりした、という表現がいちばんしっくりする肌触りだった。ぼくがこれまで経験したことがないお湯だ。パンフには「真綿にくるまれるような」とある。真綿?  こちらも経験がないなあ。

 惜しいのは外観である。おそらく昔は川向いからの眺めもよく、入り口(正面玄関)も2棟の間に川に面してあったようだ。その後の改修で、当時の玄関や川側は庭になったらしい。玄関は目立たないところに移り、歴史的建造物らしい外観と、それを外から眺めて楽しむ余地がとぼしくなってしまった。惜しい。

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