3 随筆 個性に触れる

五木寛之『孤独のすすめ』(再読)

若者の「嫌老感」を警戒 孤独をプラスに

 (中公新書ラクレ、初刊は2017年)

 2年前に読んだ本の読み直しだ。新たな発見がいくつかあった。真ん中あたりから「嫌老感」というキーワードがひんぱんに出てくる。若い世代の中に、老人層をうとましく思う気分が、いままでにはない形で拡がっているのではないかというのだ。読み直してみて、五木氏がこのムードへの危機感を強めているのを知った。この現状を真剣に心配しているのだ。

 なので読後感はとても重い。『下山の思想』で提示したような、自らの人生を俯瞰しながらゆっくりと余生を過ごしていけばいい、といった調子のものではない。

 五木氏が「少子高齢化」のことを「人口減と、高齢者比率のアップ」と言い換えているのも読み直して知った。少子高齢化だと「子供の数が減って、増えるのは年寄りばかり」という面ばかりが前に出る。

 もっとも大事なのは「全体の人口、特に労働者人口が減っていくのに、高齢者の比率だけは上がっていく」ことだ。少子高齢化ではその本質が見えなくなると恐れている。作家の本能的なセンスなのだろう。

 だから読み直しでは、タイトルの『孤独のすすめ』はミスリードではないかとも思うようになった。嫌老感をクリアするには、孤独になるのではなく、老人の知恵を発掘して需要を生み出し、世界的水準のモノづくりを今やろうというメッセージに読める。

 孤独を恐れず、それをプラスに転じさせるような知恵と需要をつくりだそうという。このあたりセンスは、藻谷浩介の『デフレの正体』『和の国富論』と相通じるものがある。

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