バブル後のクールな経済・幸福論
(幻冬舎、2004年9月)
気になる論者だった。昨年の春に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』を読んでからだ。バブル崩壊後に登場したクールな経済・幸福論である。
マイホーム購入は”土地真理教”の危険な投資である、生命保険は損することに意味がある宝くじである―。刺激的な小見出しが小気味よく続く。バブル崩壊や資金運用難を知った若い世代だからこそ言い切れる指摘だ。
最後の「暴論シリーズ」はさらに歯切れがよくて、そのぶん、どきりとさせられる。いわく、介護保険は必ず破たんする、年金制度を廃止しよう、安楽死を認めよ―。『黄金の羽根』を読み直してみなくっちゃ。
ただこの本ではぼくは、ある種の傲慢さが前著より鼻についた。幸福になるための考え方はいろいろ書いてあるのだが、各論は多くない。比較するにはかなり飛躍があるけれど、やはり昨年の初めに読んだ『巨泉2』はもっと具体的でわかりやすい。
もうひとつ、たいしたことではないかもしれないが、巨泉はもともとテレビ人でもあったから当然、顔を出している。しかしこの本の著者は顔を出していない。「自分は相手を知らないけれど、周りは自分を知っている」という状況が生まれるリスクを避けたい、という理由らしい。ここにも生き方を語る際のスタンスの違いが出ていると思う。