変幻自在の「五木ロボット」に驚嘆
(名古屋市・中日劇場 )
この人のショーを観るのは昨年に続いて2回目である。ことしは前半の演劇はあえてパスし、後半のものまねショーだけを妻と観た。
この人の芸で最高のレベルと思ったのはやはり「五木ロボット」だった。あの顔が後ろを向くと、森進一、美川憲一、谷村新司へとまさに変幻自在に変わっていく。それもロボットの擬音にあわせて―。
そして肝心の歌の部分になると、再び五木ひろしに戻るという仕掛けだ。すごい。最大の持ちネタだろうし、ほかの芸人の追随を許さない水準だろう。
ものまね歌手がものまねをせず、素(す)や生(き)で歌うとどうなるだろうか。コロッケは『悲しくてやりきれない』を歌った。初めて生の声の歌を聴き、そして、期待外れだった。
本人がステージで語っていた。「真似された歌手には申し訳ないけれど、(ある部分を強調するかデフォルメしたところが)こうして受けるということは、みなさんもそう(その部分がもとの歌手の特色と)思ってるってことですよね」
つまり、観客の側に、真似されている歌手はこういう癖や歌い方で歌うという共通イメージがあってこそ、ものまね歌手は成り立つ。観客はもともと「素顔のコロッケの声や歌」を知らないし、聴きにきてはいない。
ああ、悲しきは歌がうまいものまね歌手、ということか。選んだ歌『悲しくてやりきれない』にはその心が込められていたのだろうか。