競争否定の3馬鹿 友情と信念の学園生活
(ラージクマール・ヒラーニ監督、日本公開2013年5月)
いわゆる学園ものって、自分にはもう遠い時代の話だという気がして食指が動かなったが、この作品は違う。名門工科大(ICE)を卒業して10年たった男たちの現在から始まり、大学時代へと戻っていくので入りやすかった。
魅力の最大は3人のひとりランチョーだ。「競争も順位もいちばんでなければいけない」というICE方針を否定し、馬鹿な友人ふたりを彼らが本当に進みたい道に導いていく。その心情とカッコよさが物語の核心にある。
彼が実は、富豪の息子の身代わりなのは最初にわかる。信念に従い、卒業後は「競争しない学校」「創意工夫を大事にする学校」を運営していることがわかるラストまで、現在と過去を行きつ戻りつ進んでいく展開は見事だ。
大学長の娘との恋、その姉の出産を助けるシーンは、映画のハイライトとして申し分ない。
■原題は「3人の馬鹿ども」 スタンド・バイ・ミーのインド版か
原題は「3人の馬鹿ども」である。その3人は強い友情を保ちつつ「うまくいってる」状態を確認して映画は終わる。「馬鹿」ではないハッピーエンドは、いまのインド社会(競争否定のままでは収まらりにくいとぼくが想像する社会)の価値観を表しているのだろうか。
この映画はまた、主人公と違って競争を肯定するタイプの若者たちの上昇志向も否定はしておらず、インドのバイタリティや将来の可能性を感じさせるものになっている。
それに加えて、3度、4度と突然のように入り込んでくる、いつものダンスシーン。これもインド映画、ボリウッドの王道らしい。
笑って、泣いて、ハラハラして、喜んで、楽しんで…。欲張りで押しつけがましいが、ボリウッドを観たという気に十二分にさせてくれた。
ここまで書いてきて、ふと思った。この映画、米国映画『スタンド・バイ・ミー』のインド版といえるかもしれない。