悪夢に誘われOBも “我が庭”で納得の72位
(6月16日、東名古屋カントリークラブ)
梅雨の晴れ間がのぞいた6月16日、55歳以上のアマが競う公式競技、愛知県男子シニアゴルフ選手権の決勝に出た。舞台はぼくのホームコース。昔の悪夢に誘い出され痛恨のOBを打った時は「終わった」とうなだれたけれど、バーディーもふたつきて、予選通過116人のうち納得の72位だった。独特の緊張感、初対面だけどすぐ仲間になれるゴルフ好きたち…。この球戯、これだからやめられない。
■痛恨の左OB 悪夢が呼び寄せた
痛恨のOBは7番PAR5のティーショットだった。ボールはやや左に飛び出し、途中から強くフックしながら落下し、カート道で跳ね、がけ下の樹林へ消えていった。
アドレスに入るまえ、このホールでの17年前の悪夢が頭によぎっていた。クラブ選手権の予選だった。そこまで絶好調だったのに、ドライバーが突然左に曲がりだし、OBを連続して3発も打った。
そのいやーな感じの記憶を一刻も早く拭い去りたかった。バックスウィングでの溜めが足りず、フェースを閉じ加減のまま、力ずくで打ちにいってしまった—。
この球戯、そんな分析と自責と後悔の繰り返しだとわかっている。それでもきょうは、きつく唇をかんだ。
―よりによって大事な試合で、またやるなんて。終わった…
■超難関の奥ラフ まぐれのチップイン
思わぬバーディーがきたのは、次の8番PAR4だった。第2打をラフから6番アイアンで打ち、球は硬いグリーンで跳ねて奥へこぼれ、ラフに埋まっていた。左足下がり、グリーンまで2m弱、そこからさらにピンまで5mのきつい下りが待っていた。
カップから2m下に止まればベストだろう。超難関、ボギー覚悟のアプローチだった。56度ウェッジを開きながらバックスイングし、フェースをボールの下を通しつつ、左ひじをしっかり抜いた。
白球はふわりと腰の高さまで上がってから、まず2.5m先のグリーンに落ちた。ちいさく2度跳ねたあと、斜面をフックしながらゆっくりところがっていき、最後はほぼジャストタッチでカップに落ちた。
完璧だった。もういちどやれる自信はまったくない。正真正銘の「まぐれ」。ただ、練習さえ続けていれば神様はどこかで微笑んでくれる―。そう信じたくなる瞬間でもあった。
■距離6647ヤード 硬いグリーン
この日のティー位置は、アウトが3266ヤード、インが3381ヤードの計6647ヤードだった。このコースのレギュラーとほぼ同じ。グリーンはぶたんよりかなり硬くしてあり、ぼくの今の力なら85を切れば上出来と思いながらスタートしていた。
後半でも、出だしの10番(INの1番)で、バンカーショットを2回も失敗した。またも痛恨のダボ。恥ずかしく、惨め。やっぱり、だめか―。
しかし神様は13番(西の4番)にもいた。PAR4の第2打、フェアウェイのセンターから残り185ヤードを5番ウッドで放ったら、ピンの右2mについた。わずかなフックライン。ぼくのパターはボールの芯をヒットし、透明でかわいた音がした後、ど真ん中から入った。
この球戯、本当に何がおこるかわからない。
■予選は今年もぎりぎり通過
この公式競技は愛知県ゴルフ連盟(AGA)の主催だ。予選は5月19日と20日に犬山カントリーで開かれた。ぼくは1日目に参加し、スコア80、116人のうち33位タイで予選通過した。この日の通過者は計41人だった。
同じスコア80の選手が10人もいて、インのスコアの良い順にうち9人が予選通過できた。ぼくは9人のひとりだったから「予選通過できた選手の中の最下位スコア」である。あと1打多ければ予選落ちという、ぎりぎりの通過だった。
実は昨年の大会も、東海CCでの予選は通過選手の中でスコアがもっとも悪く、ぎりぎりだった。知多CCでの決勝も106人のうち94位タイと、下から数えた方が早かった。決勝スコア85はトップ選手と15打も差があった。
ことしも予選はぎぎりぎり通過だったけど、決勝は72位と順位は少し上がった。優勝選手のスコアは73で、差は10打に縮まった。舞台がホームコースなので、馴染みのクラブメンバーが随所に係員として立ち、応援もしてくれてうれしかった。悪夢がよみがえってのOBもあったが、ならせば利点の方が大きかったのだろう。
ことし55歳になる人から参加できる公式競技なので、愛知県内の倶楽部から「腕自慢のおじさん」が集まってくる。コースは毎年、持ち回りで変わり、顔なじみもできた。
ぼくはあと4日で70歳になる。予選を通過でき、しかもことしの決勝はホームコースだった。出られただけでおおいに満足だった。
■来週はいよいよ「グランドシニア」予選
来週はついに古稀になり、中部ゴルフ連盟(CGA)が主催する公式試合の予選が愛知カンツリー俱楽部である。「ミッドシニア」(65歳以上)と「グランドシニア」(70歳以上)。こちらは予選を通り、次の中部決勝で上位に入れれば全日本の舞台もある。
会場の愛知カンツリーは名匠・井上誠一が設計したコースだ。しかも我が家から車で15分と近い。コースの魅力をあらためてじっくり味わい、古稀ゴルファーとして「する」と「書く」を同時に愉しんでみるとしよう。