5 映画 銀幕に酔う

邦画『だれも知らない』

作り物ではない自然さ 忍耐と時間に敬意

 (是枝裕和監督、公開2004年8月)

 カンヌ映画祭で15歳の柳楽君が主演男優賞を獲って話題になった。それがなければ観ていなかったかもしれない。すばらしい作品だった。

 柳楽君は予想した以上にしっかりした演技だ。いや演技というより、つくりものではない自然さ、といったほうがいいかもしれない。こどもたちがともに暮らす部屋の様子もそうだ。

 あの感じを出すのに撮影にはとんでもない忍耐と時間を要しただろう。是枝監督の粘り強さ、作品への限りない愛着に脱帽である。

 劇中の少年たちは大人に頼らない。自分たちだけでなんとかしようとする。そこにはある種の誇りもある。大人社会を責めるというのとも違う。彼らの純粋さに、無垢なひたむきさに、心が痛む。

 普通に暮らせている親子はそのありがたさを知らない。そのことに気づき、こちらはまた考え込む。その繰り返しだ。

 是枝監督に拍手を。

 この映画を観たのは名演小劇場だった。久しぶりに訪れたら映画館になっていた。ここではかつてマイナーな小演劇を観た記憶がある。学生時代だったか、記者になってからか定かではないが、映画ともライブ音楽とも違う、濃密な空間が舞台にあったという記憶がある。

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