5 映画 銀幕に酔う

邦画『風立ちぬ』

「堀」へのオマージュ 飛行機愛に乗せて

 (宮崎駿監督・原作、公開2013年7月、MOVIX三好)

 映画のラストに「堀越二郎と堀辰雄に敬意をこめて捧げる」との字幕が出てきた。この作品のすべてを表していると思った。

<▲本棚の「風立ちぬ」>

 堀辰雄の『風立ちぬ』を読んだのは学生時代だ。結核で余命いくばくもないお嬢さんと文学青年の純愛を高原の療養所を舞台に描いた作品だった。文学青年を、実在した飛行機エンジニア堀越二郎に置き換えたのがこの映画である。

 大人向けの、美しくも哀しい愛の物語だ。楽しくも切ない飛行機エンジニアの夢の物語でもある。

 宮崎監督が大好きだという飛行機はもちろん、作画の凛々しさ、戦前から戦後にかけての日本の暮らしの清楚さは、これまでの宮崎作品と共通している。当時へのノスタルジーと、戦争の愚かさへの怒りみたいなものが混然となっている。

 監督の飛行機への思い入れは半端じゃない。効果音はみな人間の声で入れたと新聞で読んだ。それもすごい。

 舞台の半分は実は名古屋だ。二郎が勤めた三菱内燃機製造の研究所や工場があったためである。村上春樹の『多崎つくる―』もそうだった。また名古屋じゃないか」と、ちょっと嬉しい気分にもなった。

 ■ 大震災から戦争へ 監督に連想は?

 冒頭からしばらくして関東大震災が出てくる。二郎と菜穂子との出会いのきっかけになるのだが、監督には、2011年の東日本大震災への強い思いがあっただろう。アニメによる震災再現のリアルさに息を飲んだ。

 さらに深読みして、関東大震災から太平洋戦争への展開は、現代日本の東日本震災から原発事故、もしかしたら近づいているかもしれない世界大戦へのつながりを象徴させているのではとも推測した。一緒に観た妻にこの説を話したら「私は違うと思う」と一蹴された。

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