1 ゴルフ 白球と戯れる

小説『バガー・ヴァンスの伝説』

ゴルフの深遠 言霊の神秘 生涯の指南書 

 (スティーブン・プレスフィールド著、阿尾正子訳、ハヤカワ文庫)

 2001年2月の発行である。このころぼくはバンコクに駐在していて、すっかりゴルフに魅入られていたが、この小説や映画化のことは、記憶にはない。

 ウィクペディアによれば、映画は米国で2000年11月に封切られ、日本公開は2001年3月だった。つまり映画化で注目されて、日本公開にあわせて急遽、小説も訳本が出されたという経過だろう。

 ぼくがこの映画と小説を知ったのは、バンコクから2001年8月に帰国して、社会部のデスク勤務にふたたびついた後のことだ。9.11テロと同時期だった記憶はないので、もしかしたら、2002年のことかもしれない。ゴルフと一生の友としてつきあう気持ちになり、東名古屋カントリークラブに入会したころに、何かの本でこの映画と本を知った。

 さっそくDVDで映画を観て、小説も読んだ。映画が原作といかに離れているかにも驚いたが、それよりも、ゴルフが持つ深遠さに魅せられ、ひとの人生の深さと寄り添っていけることを確信できたことが深く印象に残っている。あれからなんと20年近くが過ぎた。

 いま再びこの本を手にしたのは、68歳になる2020年6月での新聞社退任が濃厚になってきたからだ。昨年の和合ゴルフ倶楽部において、67歳でシニアチャンピオンになれたのも大きい。これからの人生でゴルフとどういう気持ちで向き合っていくか考えているうちに、哲学書に近いという印象だったこの本が浮かび、読み返してみようと思った。

 ぼくの本棚では「さがしたけれど見つからないので」、20年前に後輩のだれかに貸したままだったことを思い出し、アマゾンで取り寄せた。

 読み返してみると、当時すでに50歳前になっていたのに、自分の読み込みの浅さを恥じるしかない。バガー・ヴァンスという黒人の不思議な存在感が、いまのぼくには「ゴルフの神様」に思える。彼が語る言葉のいくつかは、意味から背景まで理解を越えているが、グリップとスウィングとリズムに関しては、核心を貫いているように感じる。

 主人公と激闘を演じる実在のプレーヤー、ボビー・ジョーンズとウォルター・ヘーゲンのフォームやプレーぶりに関する記述は、それを裏付けるものだろう。

 主人公のゴルファー、ラナルフ・ジュナーが戦争で負った精神的苦痛や「心の傷」(今ならPTSDというのだろうか?)は、果たしてゴルフで救われるものなのか、は大きな論点だろう。そんな論点設定そのものが、不毛と思う自分もいる。

 まだ映画を見直していない。映画を見直した後に、もういちど原作を読み返すことになるだろう。気になる箇所に赤線を引き、付箋を貼りながら、一語一句を追ってみたくなるだろう。その言霊を思い浮かべながら、ラウンドできるようになれたら、うれしい。

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