緊張18番もバーディー 神様がご褒美
(2024年9月13日、東名古屋CC東コースで)
所属する東名古屋カントリークラブで9月13日、クラブ競技の「金曜杯」に出たら、まさかの「71」が出た。いま72歳だから「18ホールを年齢以下のスコアで回る」というエージシュート(Age-Shoot)を達成してしまった。実現できるにしても75歳ごろともくろんでいたので、まさかだった。バーディーが5つもとれて自己ベストも更新できた。真夏のこつこつ練習に神様がごほうびをくれたらしい。
■イーブンパーで迎えた18番
この日の競技の舞台は東コースの18ホール、BグリーンのPar72だった。スループレーで17番を終えたとき、ぼくのスコアは「イーブンパー」だった。
しびれたドライバー 呪文となえて
18番par4のティーグランドに立ち、ドライバーを軽く振りながら、やはり、頭の中で言葉にしてしまっていた。
「ここでもパーがとれたら、エージシュートになる…」
スイングに集中しなければと思うほど、その先の結果ばかり考えている自分がいて、どうにもならない。
あきらかにしびれていた。とても平常心で打てそうもない。やむをえない、敵は己のみ、と腹をくくった。
いつもの呪文「イチ ニー ノー オ サーン」を、いつもより大きく頭のなかで唱えながら、ドライバーを振った。球は予想より高く上がったものの、フェアウェーの真ん中に落ちた。
ピンまで126ys デッド狙いの8番
第2打地点に到着して、距離計をのぞいた。ピンは真ん中やや左に切ってあり「126ヤード」と出た。ほぼフラット。迷わず8番アイアンをもった。
ぼくの8番、きちんと打てたらキャリーは130ヤード。この日のグリーンのコンパクションは「20.0」でかなり柔らかい。「芯で打てても、きょうのグリーンなら、ピンの奥には止まってくれるはず。ちょっと芯を外してもピンわきか手前に落ちる」
それ以上は考えずいつもの呪文で振ったら、打感は完璧だった。白球は軽いドロー曲線を描いて飛んでいった。球がどこに落ちたのか、頭上から照りつける日差しが強すぎて見えない。「右奥になんとか残ったか、当たりが良すぎてこぼれたか…」
だらだら下りの8m 問題はタッチだった
グリーンに上がると、ぼくの球はエッジの少し内側に残っていた。ピンまでは8mのだらだら下り。軽いフックラインにみえた。
問題はタッチだった。クラブハウスのスピード表示は「7.1フィート」。いつもは「8」はあり、大事な競技では「10」になる。しかし今夏は異常な暑さが続いて芝が弱っているため、短く刈り込んでスピードを上げるのは難しいらしい。
「きょうは遅い、曲がりも小さい…」
「ショートしやすい。上では絶対に止めたくない、1mオーバーでも構わない…」
ぼくのパターは2ボール型だ。ゴルフ大の白い円がふたつ上部に描いてあり、打つ時のタッチ(強弱)を「バックスイングの幅をボール何個分にするか」で決めている。
「浅めのフック、カップ1個分右へ…」
「振り幅は球4個分、芯を射抜け…」
そう頭でつぶやきながらアドレスし、球のロゴ「Titleist 33」を見下ろす。ひと息おいて、いつもの呪文にそって「タイ…」でプレスフォワードし、「…ト…」でバックスイング、「…リスト」で振り抜いた。
芯と芯の感触 バーディーフィニッシュ
フェースの芯でボールの芯を打てた気がした。心地よい打感と乾いた音を残し、球は滑るように転がっていった。
あと1m半まで近づいたとき、もしかしたら、と思った。なんと、球はそのまま想定ラインをたどり、ジャストタッチでカップに届き、ど真ん中からピンに軽く当たり、消えた。「カチッ、カラン」。
いまも信じられないでいる。この球戯にはときどき、こんなことがおきる。神様は気まぐれなのだ。
■バーディーの貯金でダボをカバー
プレー全体を振り返ると、節目でとれた5つのバーディーが大きく効いた。出だしの1番par5でボギーを打った。第3打がバンカーのグリーン側斜面に突き刺さって目玉になってしまったのだ。でも3番で5mバーディーが入ってくれてすぐイーブンにできた。
次のpar5(4番)もまたボギーにしてしまった。でもアウト最終の9番では8mの上りを決めることができて、イーブンパーでハーフターンできた。
すると10番と12番でも2mと4mを決めることができて、貯金が2つもできてしまった。「もしかしたら…」と欲が出たら、案の定、14番par4で大きなミスが続いた。ティーショットを右バンカーに入れ、アプローチもパットも失敗してしまった。
このダブルボギーで貯金を使い果たしてしまった。「でも、まだイーブンじゃないか」。こう割り切れた。それが15番からの粘りにつながった気がする。
■深いラフ 遅いグリーン 失敗を糧に
「深いラフと、柔らかくて遅いグリーン」は、5日前の8日の日曜日、60歳以上のメンバーが競う「シニア選手権」の予選も同じだった。ぼくはアプローチもパットもショートばかり。ラフ脱出にもてこずった。レギュラーの「白」ティーから打ったこともあるが、「89」だった。この試合、昨年は優勝できた。それがことしは予選落ち。なさけない自滅、惨敗だった。
だから13日は個人的リベンジをしたかった。「深いラフ」と「柔らかくて遅いグリーン」に対応し、嫌な記憶を成功体験で上書きしてしまいたい、と。イメージはこんなだった。
<深いラフ> つかまっても無理しない。短めのクラブでゆっくり振ろう
<アイアンのアプローチ> ピンをデッドに。止まりやすく、大きくは跳ねない
<パッティング> タッチはいつもの倍の振り幅に。曲がり予測も半分で
■エージシュートにも条件あり
東名古屋CCは、今回のぼくのスコアをエージシュートとして認めて、コンペ結果に表示もしてくれた。でもクラブ外でも認められるものだろうか—。ネットで調べてみた。
まず一般社団法人「日本エイジシュートチャレンジ協会」はホームページで、エージシュートの大前提として次の4点を掲げている。
・キャディ付きまたは同伴競技者・コース承認
・1ラウンド(18ホール)ストロークプレイ
・ノータッチ…「6インチリプレース」なし
・完全ホールアウト…「OK」なし
13日のラウンドはクラブの主催競技だったので4つとも満たしていた。
認定基準に距離は3種類
判断が難しいのは距離のようだ。その日のティーからピンまでの距離を18ホール合計したらどれだけか—。ゴルフのスコアを決める要素は無数にあるが、基本的には、距離が短いほどスコアはよくなる。18ホールの総距離があまりに短いと、それではエージシュートとはいえない、となってしまうだろう。
ネットで調べた範囲では、関係する団体がふたつあり、総距離のヤード基準には3種あった。
▽日本エイジシューター協会
男子6000以上、女子は5000以上
▽日本エイジシュートチャレンジ協会
プラチナ認定=男子6100以上、女子5000以上
ゴールド認定=男子5400以上、女子4500以上
東名古屋CCには東と西の2コースがあり、ともに18ホールPar72だ。ティーは最長のフルバック(青)からレギュラー(白)、最短のレディース(赤)のほかに、70歳以上の「緑」や、80歳以上の「ゴールド」の5つが設けてあり、その位置も日々前後する。どのティーを使うかは競技や年齢によっても変わる。
さらにややこしいのは、計36ホールにみなAとBのグリーンがあること。つまり総合距離はどの日も2×2××5=20通りもある。
ぼくのプレーは「プラチナ認定」か
13日にぼくが回った「東コースBグリーン」の総合距離は、東名古屋CCのHPに次の3つが表示してある。
フルバック 6516ヤード…「青」マーク
レギュラー 6184ヤード…「白」マーク
レディース 5495ヤード…「赤」マーク
ぼくの組は4人とも「緑」マークを使用した。「白」と「赤」の間だ。「緑」からの距離はホームページやスコアカードには表示がない。もし各ホールで平均10ヤードずつ前だとしたら、総距離は「6184-18×10=6004ヤード」だったことになる。
ぼくはスコアカードに、ティーからピンまでの距離までは書かなかった。ただクラブ在籍20年余の経験からすると、13日の総距離は6000ヤードを少し切っていた気がする。しかし「ゴールド認定」の5400ヤードは楽に超えていただろう。
■夏のごほうび? 練習うそつかない?
ことしの夏は異常な暑さが続いた。それでもぼくは6月から8月にかけての3か月間で、あわせて34回、ゴルフ場に通い、うち21回は午前中に4時間ほど練習して帰宅した。ゴルフ場でも気温が35度を超えた日が何日もあり、妻もあきれていた。
目標はひとつだった。10月の公式競技、グランドシニア中部決勝(中部ゴルフ連盟主催)でことしこそ上位に入り、悲願の「全国大会切符」をつかみたいと思い続けて練習してきた。
もちろんエージシュートも、「晴球雨読」暮らしの夢ではあったが、もし実現できても早くて75歳ごろで、それまで健康でいられるかさえわからない。まさか72歳で達成できるとは想定もしていなかった。しかも5日前には、白ティーからとはいえ、「89」を打っていたのだから…。
ほら練習はうそつかないだろ? 健康が大事だろう? ゴルフの神様の粋な声かけなのだろうか。やっぱりまだわからん、この球戯の本質は…。わからんからこそ、ますます惹きつけられていくのだろう。なんとかにつける薬はない ? それでいいじゃないか。