本音で勝負! HC2の真骨頂 文章とは落差
(集英社、2003年10月)
最初に読んだのは2003年ごろだった。もう17年も前、ぼくが50歳すぎのころだ。高橋三千綱『われ本日ゴルフに開眼す』の後だった気がする。バンコクから戻ってゴルフに本格的に取り組み始め、所属クラブのハンディがシングルになるかならないころだった。
いまぼくも60代後半になった。あまたの先人の中で、社会から認められた仕事を持ちながら、ゴルフにも熱を注いできた著名人の人生をあらためて確かめたいと思い『われ本日―』と同様に読み直してみた。細部を覚えていないことが多いので、それをよみがえらせたいというのも理由だ。
とはいっても本宮氏の漫画に親しんできたわけではない。あの絵のタッチとか『男一匹ガキ大将』などのタイトルを、喫茶店や本屋さんで手にした漫画雑誌でさっとながめた経験があるくらいだ。
ネット情報によれば、高橋三千綱氏のひとつ上、1947年生まれだ。醸し出す雰囲気からやはりというか、ともに団塊世代である。作品は多く、中でも『男一匹-』のほかに『俺の空』とか『サラリーマン金太郎』が著名だ。
この本によれば、本人は「絵は下手」で、顔の仕上げをするぐらいだとか。しかしストーリー作りは自分でやるから、素人考えからすると、映画のプロデューサーとか監督、あるいは原作者に近いのかもしれない。
一方のゴルフは、多い時には練習場に週に4、5日も通い、週に3、4回もラウンドしたという。千葉県の勝浦に居を構え、そこから車で10分の東急勝浦クラブで初代から10回以上もクラブチャンピオンになっている。ハンディはなんと「2」。高橋三千綱が『倶楽部チャンピオン物語』で紹介するように、本宮氏は漫画も含めた作家のゴルフ仲間の中では「最強のプレーヤー」なのだ。
この本に含めた文章の初出はゴルフ雑誌だそうだ。とはいってもゴルフそのものの話は多くはなく、半分以上は時事問題や社会ネタなのにも驚いた。本人は、隠し事をせずに本音で生きるのがモットーといい、四方八方をストレートに批判している。
その文章は、ぼくから見ると説得力があるとはいいがたい。ぼくは新聞社にいて、言葉を慎重に選んで書く習性が必要以上に身についてしまっているから余計にそう感じるのだろう。それでも、漫画やゴルフの腕とこの本の文章の質に感じる「落差」はとても気になってしまった。