
不気味な足音 孫世代に伝わるか

名古屋大学の東山キャンパスにあるCommon Nexus (愛称コモネ) を4月3日に訪れ、棚主になっている本棚の展示を衣替えした。新しいテーマは「『戦争』を読む『狂気』を考える」とし10冊を並べた。米イスラエルのイラン攻撃に不気味な足音の高まりを感じ、日本の第2次大戦の評論や小説も選んだ。第3次大戦になれば戦場に行かされるのは君たちだぜ―。この危機感、孫世代に伝わるだろうか。
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ウクライナ→ガザ→イラン
不気味な足音の始まりはロシアが2022年2月、ウクライナに軍事侵攻したことだった。「ナチ化を防ぐため」と。あれから4年、国連も国際社会も無力で、終息の見通しがつかめないまま、死傷者が増えていく。
翌23年10月にはハマスがイスラエルを奇襲し、イスラエルはガザ地区で大規模な軍事作戦を始めた。こちらも停戦への動きはとぼしい。
そして2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへ軍事攻撃したうえに、トップ殺害にまで踏み切ってしまった。「イランの核開発を止め、人権侵害政権を倒すため」として。
これらは単発で起きているのではないだろう。国と国、人種や宗教の対立の底で、いがみあいと憎しみが共鳴してしまっている。この不気味さを、マイ棚に掲げた新表札にこう記した。

現代編と日本編を5冊ずつ
本や映画のテーマの中でも「戦争」にはとりわけ関心を抱いてきた。このHP『晴球雨読』では検索タグに「戦争」も入れた。いま50本ある。そのうち29本が書評。その中から、現代にも響き、学生に読んでほしい本を10冊選んだ。
その10冊のうち、言及している戦争が海外を多く含むのは5冊。日本の第2次大戦や戦後についての論評が中心なのも5冊ある。海外編と日本編にわけ、タイトルとぼくが書評につけた見出しを、読んだ年月の新しい順に並べると―
<海外編> 「ウクライナ」以降
■川北省吾『新書 世界現代史』(2026/3/23)
プーチン 習金平 トランプ
「失地回復」へ共振
「失われた栄華」への衝動
■東浩紀『平和と愚かさ』(2026/1/27)
なぜ戦争・虐殺を繰り返すのか
「戦地」への旅 「観光客」の哲学

■小泉悠『ウクライナ戦争』(2023/2/12)
斬首作戦失敗 ロシアに高慢と偏見
プーチンの「民族再統一」
元スパイの「大博打」
■高橋源一郎『ぼくらの戦争なんだぜ』(2022/9/20)
「小さなことば」求めて
教科書 詩集 小説 めくるめく引用
■佐藤優『プーチンの野望』(2022/8/2)
自分=ロシア国家
仮面の裏に過剰な自己愛
<日本編> 第2次大戦と「戦後」
■浅田次郎『終わらざる夏(上中下)』(2015/6/23)
戦争の理不尽
徹底して個の目線
■森達也『すべての戦争は自衛意識から始まる』(2015/3/16)
強くて逃げない直球
球筋がネトウヨ刺激

■白井聡『永続敗戦論』(2014/11/13)
斬新な論点携え
戦後史に若い論客
■加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(2009/11/15)
「それでも」の意味が
やはり気になる
■佐藤卓己『8月15日の神話』(2004/8/2)
敗戦→玉音・終戦
→お盆・慰霊・甲子園
次の戦場 行かされるのは君たち
タモリが「新しい戦前」と表現したのは、ウクライナ侵攻が始まった2022年の末だった。その後、第3次大戦への不気味な足音は、さらに大きくなっている気がしてならない。
次の大戦、戦地へ行かされるのは君たちだぜ―。コモネの中央通路を行き来し始めた新入学生は孫世代だ。じいさんになったOBの懸念とメッセージ、伝わるだろうか。
「旅」→「映画の原作」→「戦争」
ぼくの棚がある名大のCommon Nexus (愛称コモネ)は昨年7月にできた。東山キャンパスの真ん中、ずっとグリーンベルトだったところ。地味な広場が、明るくて自由な半地下空間に生まれ変わった。母校の大変身に驚き、感激した。


なかでも真ん中にある巨大本棚Roots Booksが気に入った。本は「棚主」が自由に展示できると知り、すぐ応募した。展示本は春夏秋冬で入れ替えていくことにし、開設時のテーマは「2025夏 すべては『旅』から始まる」。20冊を並べた。

最初の衣替えは、昨年の暮れだった。映画『国宝』の大ヒットが小説にも飛び火していたのに刺激されて、新テーマは「2025冬 小説からに映画そしてブログへ…ひと粒で3度おいしい」。並べた原作20冊を”貸し出しOK”にしたら『国宝』と『盤上の向日葵』を借りてくれた人がいた。

数絞り 表紙展示を6冊
過去2回の展示では20冊ずつ並べた。マイ棚の幅は56cmしかないので、ほとんどは背表紙しか見えなかった。ほかの棚をみると、イチオシ本はブックスタンドに立てかけて、表紙がよく見えるように工夫されている棚主さんがいらした。
そこで今回はまず、展示本を半分の10冊に絞った。さらに6冊は表紙が見えるスタンド置きとし、2列に配置した。前の列は背が低い新書3冊とし、後列を見えやすくしてみた。

もうひとつ、ブックスタンドの下側支えにポップを貼りつけた。HP『晴球雨読』に収録している書評の見出しを印刷し、サイト内の書評にすぐ飛べるようにQRコードも添付してみた。
さて次はどんなテーマにしよう。もっと伝わりやすい展示はないか。次の衣替えを予定する「2026夏」は、すぐ、やってくる。
