1 ゴルフ 白球と戯れる

ことしも予選で自滅 公式試合初戦のグランドシニア 冬練習も実らず

ミス重ね 神様も生かせず「黒の舟歌」

 日本パブリックゴルフ協会(PGS)のことしのグランドシニア・アマチュアゴルファーズ選手権は3月22日、中部で最初の予選が井深の森カントリークラブ(岐阜県美濃加茂市)で開かれた。ぼくは34位に終わり、中部大会に進める上位27人に1打及ばなかった。情けないミスを重ね、神様がくれた幸運も生かせず自滅してしまった。公式試合の初戦は3年続けての予選敗退。冬場の練習も実らず、あの『黒の舟歌』が頭のなかで響いている。

<▲左=パッティング練習場 右=大会看板>
<▲通過枠>

■1番 プローチでトップ トリプル発進


 最初のつまずきは、イン1番par4の第3打だった。ピンまで35yのアプローチ。ライは強い左足上がりだった。ぼくはエッジから2-3mのところに落とすつもりで56度のウェッジを時計の40分から20分の幅で振った。ところが―

<イン1番のコース図=クラブのHPから(以下同)>

 クラブのエッジがボールの赤道付近に入った。球はトップ気味に飛び出し、ピン手間で低く跳ねて、奥へとこぼれていった。

 アドレス時に下半身をどっしりさせなかった。左6右4の体重配分も忘れていた。最近ふえていたミスだった。「またやってしまった」。悔恨が胸をむしばんでいくのがわかる。

 グリーンからこぼれた球は、エッジから5mの薄いラフにあった。エッジまでの斜面は深めのラフ。ピンまでまだ15yはある。ぼくは斜面でワンクッションさせようと、ピッチングで4mを打った。球はその通り飛んだが、ラフでは50cmしか跳ねなかった。よく見るとラフは順逆目で思ったより深かった。そこから48度ウェッジで5オンさせ、2パット。トリプルボギーになった。

 いまなら、わかる。伏線は第2打の8番アイアンにあった。左足上がりのラフからひどくダフってしまい、90yしか飛ばず、30yも残してしまった。左足上がりのライは、球を平地と同じところに置くとダフりやすい、とわかっていたのに。

 そこで第3打はボール1個分だけ右足よりに置いた。そこにばかり注意が向かい、ほかのルーティンを忘れてしまった。

■2番で神は微笑んだ 3パットで見殺し

<▲イン2番=HPから>

 2番は打ち下ろしの167y、par3である。ぼくは6番アイアンで打った。下半身の動きが鈍く、球はフックしながら左斜面のOB杭へ向かっていった。

 しかし球はOB杭の右側斜面で大きく右へ跳ね、ころころと転がって落ちてからグリーン斜面を駆けあがり、ピン下にワンオンした。

<▲イン2番=HPから>

 「助かった、神様がいた」。トリプルボギーの後だったから、心底ほっとした。「バーディーなら2オーバーに戻せる」と計算しながらグリーンに着くと、8mの上りが待っていた。

<▲手書き表示>

 軽いフックに見える。ハウス表示は「9.3ft」だったが、1番グリーンはそれほど速くなかった。強めに打った球はピンの右15cmを過ぎてから軽くフックして止まった。下り1.5m、難しいラインを残してしまった。

  「……」。もやもやした気分のまま、返しのパットを打った。今度は弱すぎて、球はカップ手前で右へ切れた。3パットのボギー、2番を終えて4オーバー。「ああ、早くももう、終わった」

 ■6番 グリーン奥 地獄の砂地

<▲イン6番=HPから>

 こんな状態になると競技ゴルフは苦しい。象徴が6番だった。2番と同じような打ち下ろしのpar3だった。距離は137y。前の人の球が風に戻されたのを見て、7番アイアンをしっかり目に振った。芯でとらえた球はグリーンを越えてしまい、奥のラフで跳ねた。

 グリーンの奥へ着くと、ほとんど砂地だった。芝はところどころに残っているが、ぼくの球は砂の上にあった。グリーンまで4mはあり、途中の斜面は2番と同じ逆目の深いラフ。ワンクッションはあきらめ、直接乗せるしかない。

<▲イン6番=HPから>

 56度ウェッジを持ち、オープンに構えてからも、迷った。フェースを開いてバンカーショットのように砂ごと飛ばすか、ロフトを信じて球の直下に打ち込み上げるか―。足で感じる砂地は浅すぎる。バンカーショット風に払おうとするとホームランになる恐れがある―。

 フェースをほんの少し開き、真下に入れて5m先に落とそう―。しかしヘッドはダフリ気味に入って球は2mほどしか前に行かず、斜面のラフに落ちてから転がり戻ってきてしまった。血が頭にのぼる。意地になって同じトライをし、同じミスを2度繰り返した。4度目に球はカラー近くまで届き、そこから48度ウェッジで寄せて6オンの1パット。7打を要した。

 Par3で7打以上を打ったのは、5年前、和合でバンカー脱出に4度失敗したのが最後だった。大事な公式試合でそれが出るとは…。

 PGSグランドシニアの予選は2年続けて予選落ちしていた。来年こそと冬の間、3月の初戦に備えてあんなに練習したのに…。情けなかった。惨めだった。

■「2打」少なければ予選通過 疼く悔恨

 辛い気持ちを抑えながらなんとかホールアウトした。スコアは前半のインが49、後半のアウトが43の「92」だった。2日前の練習ラウンドはOBを打っても「84」だったから、またも力を出せずに終わってしまった。予選通過ラインは「85」とみていたから、お風呂にも入らず、傷心のまま帰路についた。

<▲前半イン=GDOマイページから>

 この日の結果は自宅で午後5時半すぎ、日本パブリック協会のホームページで知った。なんと、ぼくは34位。スコア「91」のうち3人が予選を通過できていた。

<▲後半アウト=GDOマイページから>

 結果論からいうと、ぼくはあと2打少ない「90」に踏みとどまっていれば、予選を通過できていた。すぐに1番のアプローチトップ、2番の3パット、6番par3のアプローチミスが思い浮かべた。「どれかが、なければ…」。

 そんなタラレバは、カットラインに届かなかった選手みんなが感じているだろう。それをわかっていても、悔恨が次から次へ沸いてくる。それが競技ゴルフなのだ。

■「言葉とリズムの間」の深い河

 10日前に読んだ『ゴルフ白熱教室』の印象記は、最後をこう締めた。

 頭で浮かべる言葉と、生身の体が生み出すリズムや力加減の間には「広くて深い河」があるのではないかー。この河を渡ってしまうまで努力できた人の、しかもその一部だけがトップアマやプロになれるのだろう。
 きょうはあさから雨が降っている。この本の読後感に浸りながら余興に『黒の舟歌』のゴルフ版をつくってみた。あすの練習が待ち遠しい。

〽 言葉とリズムの間には
〽 広くて深い 河がある
〽 容易に渡れぬ 河なれど
〽 イチニイと 明日も棒を振る

〽 ヒット アンド ドロー
〽 ヒット アンド フェード

〽 振り返るな ヒット
 (2024/03/12 団野作成)

 この「広くて深い河」。きのうの試合で痛いほど実感した。きょう(23日)も朝から雨が降っていた。雨粒を見ながら、この替え歌を口ずさみ、この悔恨記を書き終えた。いまはまだ打ちひしがれていて、ふたたび練習にでかける意欲はわいてこない。

 でもきのうの悔しさは、こうして活字に置き換えたことで、かなり昇華できた気もする。もうひと晩ぐっすり寝て、あすの朝がくれば、ゴルフ場へ出かける元気が少しは戻っているはずだ。「河」は渡れなくても、その広さと深さはもっと味わいたいから。

こんな文章も書いてます